第1回研修レポート

1st training report

第1回研修レポート

1st training report

第1回プログラム

第1回目の研修は、2022年7月8日(金)から11日(月)にかけて実施されました(今回は特別に3泊4日のプログラム)。研修中は、登別の奥座敷・カルルス温泉の1つである鈴木旅館に宿泊し、ここから車で約15分の場所にある日本工学院北海道専門学校内のDSルームや、カルルス温泉内の湯元オロフレ荘で座学やワークが行われました。研修中のハイライトを振り返ります。

プログラム概要

期間:2022年7月8日〜11日の4日間

場所:日本工学院北海道専門学校・カルルス温泉旅館

地人との距離が一気に縮まる“場活”


本研修に参加するのは、属性がバラバラな多様性のあるメンバーです。第一回目の研修では、首都圏からの企業人が5人、関西圏からの企業人が2人、日本工学院北海道専門学校の教員2人、学生3人、登別市の地域おこし協力隊員(韓国出身)1人と多彩な顔ぶれでした。

この短期間でチームが一丸となり、最終日に課題解決方法をプレゼンするには、チームビルディングが不可欠です。これを地域リノベーション協同組合理事の泉一也が担当。参加者同士が知り合い、心の距離を縮めるため、その日の研修を始める前に“場活”と呼ばれるワークが行われました。ゲーム感覚でワークに参加できるため堅苦しさがなく、気づけば周囲との会話が自然と弾む状況に。

研修の後半は、プレゼンに向けたチームワークが多くなりますが、この場活によって参加者全員と打ち解けた感覚を持ち、安心安全な環境で初めての者同士がこの3泊4日を過ごすことができました。

本質を学び、即実践につながる講義


本研修では、「DX」と「デザイン思考」を学びます。講義を担当するのは、地域リノベーション協同組合代表理事の並木将央です。『The Japan Times』の「次世代を担う100人のCEOアジア2014」に選ばれた新進のコンサルタントでありながら、親しみやすい話術で講義を行い、研修参加者はその内容にグッと引き込まれている様子でした。今まで知っているつもりになっていたDXの本質とデザイン思考を再び学び直した後、研修2日目にはワークショップを実施。そこで設定された課題に対して、DXとデザイン思考を取り入れた解決策を自ら導き出すことによって、“知っている”知識から“実践で役立つ”知識への変換が行われ、DXとデザイン思考が心身に落とし込まれていく感覚を得ることができました。

カルルス温泉の3旅館の声を聞く


研修1日目、夕食をとった後に参加者たちは鈴木旅館の大広間に集まり、カルルス温泉で現在営業している3旅館、『鈴木旅館』、『湯元オロフレ荘』、『森の湯 山静館』それぞれの経営者の話を聞きました。3旅館共に日々の経営で忙しいため、今回は一堂に会した3者の話を聞ける貴重な機会となりました。

鈴木旅館代表の鈴木寿一さんは5代目で、自身が経営するようになって12年。建物の築年数が経ち、客室にトイレが完備されていない状況を今は個性になる時代と捉えていること、働いているスタッフの高齢化に加えて継承の問題を抱えていることを話しました。

湯元オロフレ荘の日野安信さんも5代目。湯元として123年間カルルス温泉を守り続け、祖先が温泉地の開拓を行った歴史などを紹介しました。また、各3旅館で水タンクの掃除や草刈りなどを分担してきたが、日々の忙しさで継続するには厳しい状況であると話しました。

森の湯 山静館の若女将、工藤織枝さんは、“特別な日常の提供”を信条に旅館を経営して、お客様のターゲットを若い30代にしていることを話しました。元々文章を書くのが好きで情報発信を積極的に行ってきましたが、SNSの書き分けが面倒になってきたという悩みも。

3旅館とも異なる特徴があり、抱える課題、カルルス温泉への思いもそれぞれであることが分かりました。また、日本工学院北海道専門学校の教員からは、かつては学生とカルルス温泉の交流があったこと、カルルス温泉と学生がコラボレーションして課題解決に向けた取り組みができないかと思案しているという話もありました。

最終プレゼンに向けたグループワーク


研修1日目で知り合ったばかりのメンバー同士で2日目にチームを組み、1チームはカルルス温泉内の3つある旅館の1つである鈴木旅館の課題解決を、残り2チームはカルルス温泉全体の課題解決をテーマに選びました。そして、4 日目最終日のプレゼンに向けてグループワークに取り組みました。

2日午後にフィールドワークを実施し、参加者はカルルス温泉内を散策。旅館から数分歩いた場所には登別川(千歳川)や緑の深い森が広がり、自然豊かな場所であることが分かりました。その一方で、営業を止めてしまった 4 つの宿泊施設や廃墟となっている現状や、夏場の利用が進んでいないスキー場なども見学し、カルルス温泉が抱える課題についても把握しました。

そして、フィールドワークの後、そこで得た結果を元に課題を洗い出し、解決策を探るためのディスカッションの時間へ。ここでは、本研修の講義とワークショップで習得したDXとデザイン思考を意識しながら、どのチームも時間をかけてようやく解決策を導き出し、最終プレゼンに向けた準備に取り掛かりました。

課題解決のためのプレゼンを最後に実施


4日目の研修最終日、今回の研修のハイライトとなる3チームによるカルルスの課題とその解決策に関する発表が行われました。忙しい合間を縫って、日本工学院北海道専門学校の副校長の他、カルルス温泉3旅館の経営者らも駆けつけました。

最初のチームは、鈴木旅館の建物の味を生かすことを提案。昭和を感じさせるグッズや電話ボックスなどを展示して、昭和レトロを売りにすることで集客を図るプランを発表しました。2番目のチームは、カルルス温泉が漫画に没入してゆったり過ごす場所として打ち出し、そのために大量の漫画と寝転んで読むスペースがある施設を作ることを提案。最後のチームは、カルルス温泉のあらゆる課題解決やファンを醸成する組織として「カルルス財団」を立ち上げることを提案しました。

提案を聞いた3旅館からは、実現化は難しいかもしれないが提案に面白さを感じたので継続的にこの研修参加者と関わっていきたい、今後考えなくてはならないことがたくさんあると改めて認識した、この3つの提案についてもう少しじっくり時間をかけて考えたいといった声が上がりました。カルルス温泉での課題解決は始まったばかり。今後、いろいろなプレーヤーが継続的に地域と向き合うことの大切さを確認して、プレゼンを終えました。

〇1回目の地域課題テーマと提案

カルルス温泉 地域活性案
・カルルスを応援してくれる みんなとともに
 カルルスの未来をつくるための財団 カルルス財団
・漫画で脱力(まんだつ)でゼロリセット
・昭和レトロ 鈴木旅館

第1回研修の成果

・鈴木旅館では、「ケロリン」の風呂桶、椅子などのグッズを購入して統一。お土産コーナーを一新して、レトロな電話ボックスを設置。館内探訪マップを作成したことにより、宿泊客の滞在時間が以前と比べて増えて好評を得る。こうした取り組みが、新聞に2回、地元観光誌に1回掲載された

・2022年9月9日より、Facebookページ「公式カルルス温泉郷ファンコミュニティ」を開設。同年11月25日現在、メンバー数36人。運営メンバーは月に一度ミーティングを開催している

・2022年10月に日本工学院北海道専門学校建築学科の学生による、景観診断を実施。景観診断の様子を、新聞社2社、テレビ局2局が取材。同年12月に景観診断に関する発表会を実施予定